▼「ソロモンの指環」鳥と話せる博士のエッセイ
世に名著、古典といわれる書は多いが、 本書も、自然科学の分野ではおそらく文句なしの名著・古典に数えられる一冊である。
生後まもないハイイロガンの雌のヒナは、こちらをじっとみつめていた。
私のふと洩らした言葉に挨拶のひと鳴きを返した瞬間から、彼女は人間の私を母親と認め、よちよち歩きでどこへでもついてくるようになった…
一般にもよく知られている『刷り込み理論』などの理論で著名なノーベル賞受賞の動物行動学者ローレンツが、けものや鳥、魚たちの生態をユーモアとシンパシーあふれる筆致で描いた、永遠の名作。
動物学者としての、膨大で気の遠くなるような観察や実験の果てにもたらされた、美しい叙事詩の様な書物だ。
生き物に対する大きくて深い愛がその根底にあるので、読んでいて何とも言えぬ安らかな気持ちになる。
まるで、ムツゴロウ先生みたいな暮らしをしていたんだね。(なにしろ、動物を飼うのに危険だからと、自分の娘を檻に入れるような人である。)
でも、鳥と話せる人なんて、そうそういないと思うんだけどな。
あまり、大きな声で言えないが、そもそも、ローレンツ博士の風貌からして人間よりも、別の類人猿に近い(敬意を表して)。
これは揺るぎもしない金字塔。
動物好きなら外せない名著である。(ほかに有るとすれば、ドリトル先生か?)
▼ソロモンの指環―動物行動学入門
▼ソロモンの指環―動物行動学入門
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▼世界を変えた科学書:二重らせん
著者のジェームス・D・ワトソンは、言わずと知れた「ワトソン・クリックの二重らせん」構造を発見したワトソン。
DNAの構造解明に成功するまでの過程をリアルに、そして赤裸々に語った感動のドキュ メント。
科学者仲間の協力だけでなく確執や嫉妬もすさまじい。
彼らが、二重らせん構造をとらえるに至る過程でのポーリングとの先陣争いのつばぜり合いも熾烈である。
発見後まもなく書かれたということで、いわゆる回顧録とは異なって、当時の新鮮な熱気が伝わってくる。
アメリカからやってきた生意気なヒッピー「ワトソン」と偏屈な「クリック」が、 いかに楽しそうに、また悩みながら研究をしていたかが生き生きと描かれている。
科学という普遍性や客観性を求められる仕事と、それに携わる人たちの個性や主観 のぶつかりあいの対比が面白い。
また、DNAのらせん構造決定の大きな証拠になったX線解析の写真を持っていたのは ロザリンド・フランクリンという女性。
この女性から、どうやって写真を見せてもらうのか?
その入手方法は、果たしてフェアと言えるのか、どうか。
彼女が待つ悲劇とは?
本文中でクソミソに描かれているX線結晶解析の大御所「ブラック卿」に「紹介文」 を書いてもらっているのが、おかしい。
翻訳は「あの」中村 桂子さん。
彼女の最初の翻訳だと思うな。。。
しかし、この発見当時の「生意気なヒッピー野郎、ワトソン」は若干25歳だったとは!
最近、またワトソンが書いた「DNA」と合わせて読むと、面白さは倍増です。
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▼人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」
四万〜三万年前のヨーロッパ。
ネアンデルタール人と現生人類のクロマニョン人が共存していたらしい(!!ゲ!知らなかった。。。)。
両者の交流を示唆する痕跡が、フランスなどに残されていた。
知能に勝るクロマニョン人が作った石器と同じくらい工夫を凝らした石器(石刃)が、ネアンデルタール人の三万数千年前の化石とともに見つかっている。
最新の研究で明らかになってきた私たちのルーツの新常識。
今世紀に入ってから相次ぐ新発見で激変する人類史の世界。
最古の人類からネアンデルタール人、現生人類の謎まで、驚きと興奮の一冊だ。
新聞の科学記者が書いただけあって、実に読みやすい!
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▼眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
進化論の祖ダーウィンが終生悩んだ謎が二つある。
一つは、なぜカンブリア紀以前の地層から化石が見つからないのか?
もう一つは、眼という「完璧にして複雑な器官」が進化によって説明できるのか?
本書によって、この二つの問いがふいにつながり、眼の誕生がもたらした壮大な進化ドラマが見えてきた。
5億4300万年前、カンブリア紀の始まりと同時に、生物は突如、爆発的に進化した。
「カンブリア紀の爆発」として知られるこの急激な進化は、なぜ起こったのか?
その謎に挑んだ若き研究者は、もともと貝虫類というミジンコなどの仲間を研究していた。
ある日、貝虫がきらりと光る。
その光に魅せられ、生物の体色研究にのめりこんだ彼は、バージェス動物の体色を現代に甦らせ、ついにカンブリア紀の爆発の謎にたどりつく。
カギを握るのは「光」。
光は生物進化にいかなる影響をもたらしたのか?
地球最初の眼が見た光景とは?
そして生物学、地質学、光学、化学などの最新の成果から見出した「光スイッチ説」とは?
画期的アプローチで生命史の大問題に挑む。
まさに目からウロコの興奮と驚き、生命進化の奥深さを実感する書だ。
聡明で好奇心旺盛でかなりお茶目な青年科学者が、自分の専門領域でのひょんな発見をスタートとして、最終的には生命史最大の謎、カンブリア爆発の原因を解明する物語である。
著者はポピュラーサイエンスの使命をはっきりと自覚して、徹頭徹尾平易な文章で通している。
また、著者の人格に由来するのだろうが、素直な感動を率直に書き進めて行く手法は、臨場感に溢れ読者の共感を呼ぶ。
つまり読んでいて滅法面白い。
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▼脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
「あはははは!」本のタイトルを見た時、大笑いした。
で、本書の中身も、相当 興味深い。
たとえば、ショッピングで気に入った服が二つあったとする。
高価なので、どちらか一方しか買えなかったとき、後で「あのときの選択は正しかったのだ」とばかり、自分を正当化する理由を探し始める(わかるわかる)。
その服の好きな点を探したり、あるいは買わなかった服の欠点を挙げたりなどして納得する(うんうん)。
その時脳は、もっともらしい「言い訳」を探し出す(そうそう)。
「後悔していない」、「あのときの選択は正しかった」という潜在的な意識を働かせるのだ(あ!やっぱり?)。
「後悔を嫌う」という本能があるからこそ、脳は私たちの人生を幸せなものにすることができる(ようにできているので嬉しい)。
・海馬を鍛えれば記憶力は上がるか
・人が思い込みをする理由
・バイオリニストの「指」の脳領域
・「私にはこの人しかいない」このとき脳では何が!?
・思い出す、という脳作業の不思議
・記憶力のよしあしを決める「七つの遺伝子」
・なぜ、「浅い眠り(レム睡眠)」のときに夢を見るのか
・赤ちゃんはなぜ左利きか
……など等、興味が尽きない話題が満載です。
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