▼今世紀で人類は終わる?
通り魔殺人を起こすタイプの人間が、核兵器並みに破壊力のある技術を手に入れるなど、様々な脅威を指摘。
温暖化よりも深刻な、科学技術による滅亡のシナリオを物理学者が論じる。究極の未来論だ。
原題は「Our Final Century?」なので邦題「今世紀で人類は終わる?」より少し穏やかかもしれませんね。
タイトルからして、帯の「終末」などの文字からして、思わず素通りしてしまいそうな本。
しかしこの本はそういう直観的に敬遠してしまいそうな本とは一線を画しています。
ここに述べられているのは21世紀の科学技術の負の側面。
その危険の可能性が低くとも (ありそうにないと思われても絶対ないとは言い切れない)そのリスクは世界破滅への道に通じている以上、無視できないと主張する。
地震、火山、小惑星衝突の危機も一考する。
後半は地球外生命探索や人類の宇宙進出および大規模移住など(どの話も興味津々)人類が自滅を回避しながら未来へと向かう世界に目を向ける。
視野を広げてくれる良書だ。
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▼ビッグ・クエスチョンズ
時間とは何か?
未来はすでに決まっている?
宇宙はどのように生まれた?
ビッグバンのその前は?
パラレル・ワールドは存在する?
別次元はある?
月は人間が見ていないときも、そこにあるのだろうか?
神はいるのか?
心とは何だろう?
…科学の話をわかりやすく解説した本を多数書いている物理学者・科学ライターの著者が、古代の哲学者たちが問うてきた疑問を現代の科学がどこまで解き明かしたのかを、量子力学、超ひも理論、カオス理論など最新の科学理論の解説も交えながら語ります。
こういう人間が太古から不思議に思っている(中には最近のものもあるけれど)ビッグ・クエスチョンズが科学を発達させてきたんだね、ということがよく分かる本。
それに、上記のような質問にも、けっこう、いい線まで答えられるようになってきた(と言うこと自体が凄い!)
科学ネタが大好きな人にはたまらない本です。(僕のようにね。)
▼ビッグ・クエスチョンズ―神はいるのか、いないのか 科学が解き明かす12の大疑問 (楽天)
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▼歴史のなかの科学コミュニケーション
珍しい本だ。
本書の物語の主役は、科学者や技術者(すなわち、新しい知識の発見者や新しい技法の考案者)ではなく、そうした科学者や技術者の間での知識の伝達・伝播を支援してきた人々である。
つまり、学会の創立や運営、出版、便覧や辞書等の編纂、書誌作成、編集、翻訳といったことにたずさわる人々、図書館員および情報学研究者、科学における用語法・命名法・分類に関与した人々を中心に取り上げる。
なお、その中には、科学的発見や技術の発明において貢献した者も含まれるが、本書では、コミュニケーション過程に関する功績に焦点を当てている。
こういう本って、絶対に日本からは生まれないと思う。
何故なら、情報と水と安全はタダだと思っている民族だから。
まったく稀有な本だ。
科学史として読んでも面白いし、情報学として読んでも面白い。
とても地味な本だが、本当はこういうことが今の科学の発展やインターネットを支えているんだよね。
それを思いながら読むと、静かな感動が湧いてきます。
自ら、ネットの中に情報源を持ち、世界に発言していきたい人には必読の本です。(たとえ、それがブログでも参考になる。)
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▼世界でもっとも美しい10の科学実験
実験で知る科学史。
科学史(特に物理学)に残る著名な実験のうち、物理学誌の読者投票で選ばれたもっとも美しい実験のベスト10を式なしで説明し、美しさのポイントを絵画の鑑賞のようにやさしく解説している。
科学法則はいかにして実験されたのか。
科学者たちは実験のことを時に「美しい」と形容する。
ぼく自身も科学者の端くれだが、確かにそうだ。
美しい実験、美しい結果といった言葉づかいに違和感はない。
著者は、哲学者・科学史家という自分の立ち位置から、科学者たちとの対話を通して、その「美しさ」の意味をくみ取り、10の「美しい科学実験」を通して、「実験にとって美しさの意味とは何か」「実験に美しさがあるのなら、それは美にとって何の意味があるのか」という2つの問いに答えようとする。
もともとは雑誌「Physics World」での連載であり、取り上げられた10の実験はアンケートに基づいて選ばれている。
扱っているテーマは、エラトステネスの地球の外周の長さを求める実験、ガリレオがピサの斜塔で落下の法則を確認した実験、ガリレオが慣性の法則を確認した実験、ニュートンがプリズムで確認した光の分散の実験・・・・・・・など等。
おそらく実験とは、科学者にとって自分自身との対話であり、自分自身の哲学が具現する瞬間でもある。
だから、実験を経た後の科学者の言葉は、その深さと重さを増す。
訳者もあとがきに書いているが、ニュートンの「光は屈折するときにその色を変えない」という言明に、この書物の中で出逢うとき、理性ではなく感性を揺さぶられ、涙すらあふれてくる。
科学が、芸術同様に人間の感性に訴えかける営みであることを著すことに、著者は成功している。
10の実験について語った各章を結ぶ間章もとても興味深い。
取り上げている科学実験は、ほとんどが日本では高校までに学んだものだが、教科書で法則を実証するためのものとして記述されている実験像とは異なる、生の科学者の肉声が聞こえてくるようだ。
訳者あとがきで、青木薫さんが、原子の二重スリット実験の写真に涙が出たと書いているが、まさにそのとおりだ。
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▼『論文捏造』だ!
科学の殿堂・ベル研究所の、若きカリスマ、ヘンドリック・シェーン。
彼は超電導の分野でノーベル賞に最も近いといわれた。
しかし2002年、論文捏造が発覚。
『サイエンス』『ネイチャー』等の科学誌をはじめ、なぜ彼の不正に気がつかなかったのか?
欧米での現地取材、当事者のスクープ証言等によって、現代の科学界の構造に迫る。
なお、本書は内外のテレビ番組コンクールでトリプル受賞を果たしたNHK番組を下に書き下ろされたものである。
じわじわと分かってくる科学界の「負」の部分。
それらを食い止めようとする「正」の部分。
まるでサスペンスを見ているかのようだ。
科学は信じられるが人間は信じられない、と言うことか?
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■論文捏造
なお、本書に併せて下記の本も読むと面白さ倍増です。
▼『国家を騙した科学者』
みなさんもニュース等でよくご存知の初の韓国・最高科学者の称号を受け、巨額の研究費を手にしていた黄禹錫。
だが、難病治療が可能になるとした彼の論文は真っ赤な嘘だった。
なぜ人々は国を挙げて彼に熱狂し、騙されたのか?
それは日本でも十分に起こりえることだ。(実際に起こって、教授が免職になっている。)
「科学者」というレッテルに騙されないために一般市民は何をしたらいいのか?
考えさせられる本です。
■国家を騙した科学者 (楽天)
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▼ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
哲学の歴史を知ることは人間の存在を学ぶことだ。
ある朝、ソフィーに届いた1通の不思議な手紙。
そこから、ソフィーの哲学にまつわる冒険が始まる。
読者はソフィーとともに、哲学を自然に学んでいく。
世界の人々を魅了した、ノルウェー発の不思議な哲学ファンタジーである。
「一番やさしい哲学の本」として記録的なロングセラー小説となり、映画化もされた。
僕はNHKのラジオドラマで、この物語を初めて知った。
主人公はごく普通の14歳の少女ソフィー。
「あなたはだれ?」とたった1行だけ書かれた差出人不明の手紙を受け取った日から、彼女の周囲ではミステリアスな出来事が起こっていく。
「世界はどこから来た?」「私は一体何者?」これまで当たり前と思っていたことが、次々と問いとして突きつけられる。
そしてソフィーはこれらの謎と懸命に向き合っていくのだ(そして読者も)。
ソクラテスやアリストテレス、デカルトやカント、ヘーゲルなど、古代ギリシャから近代哲学にいたる西洋の主要な哲学者の大半が登場する。
読者をファンタジックな世界へ誘いながら、ソフィーと一緒に彼らの概念をやさしく生き生きと読み解いていく手法は秀逸である。
哲学というこの世界じゅうの物事の根源、存在の意味の解明をおもしろく描き、おとぎ話と融合させた作者の功績はとてつもなく大きい。
娑婆に飽き飽きした時に、是非、どうぞ。哲学者って、子どもの心を持っている大人だ。
中学生以上なら楽しめる。
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●ソフィーの世界(下) (楽天)
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▼ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
ガリレオの指さす方向へ進んだ科学が到達した高み。
そこから見渡される10の主要な科学理論をセレクトし解説する、『エントロピーと秩序』の名匠アトキンス渾身の1冊だ。
進化論をはじめ、エントロピー、相対論、量子論、シンメトリーを経て算術にいたる、現代科学の10の主要理論を、ポピュラー・サイエンスの名手アトキンスがセレクトし、そのエッセンスを抽出する。
科学に興味を持つ大学生、高校生に是非読んでもらいたい。
若者の人生を変えるポテンシャルを持ったすばらしいポピュラーサイエンス。アトキンスの数々の著作の中でも、際だった傑作。
科学的に世界を眺めるためのヒントが全巻にわたって横溢している。
全体の構成、構想が凄い。
進化、DNA、エネルギー、エントロピー、原子、対称性、量子、宇宙論、時空、算術。
さまざまな話題を往還しつつ、大局的には、身近なものから人間の知覚スケールとは乖離したものへ、具体的なものから抽象的なものへと読者を導いていく、この全体構成の企みの大胆さ。
それを実現してしまう膨大な知識。
人間は、抽象的な概念操作を無理なくこなせる不思議な動物だが、最終章「算術」に至って、数を数えられる、ということの不思議さが実感をもって迫ってきて、身震いする。
この世界、そしてこの世界の一員であるぼく自身の存在の不思議さ、おもしろさを存分に味わわせてくれる。
ニーチェは「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」と言ったが、【無限】は【怪物】なのかもしれない。
この算術の章はそんな気分にさせられる。(精神がぶっ飛んだ数学者がいる、というのも分かる気がする。)
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▼人類が知っていることすべての短い歴史
宇宙のはじまり、DNA、プレートテクトニクス、10の-43秒という時間の長さの秘密。
テストのために丸暗記しただけの用語や数字の奥には、驚くべき物語が隠されていた。
科学と無縁だったベストセラー作家が一大奮起し、三年かけて多数の専門家に取材、世界の成り立ちの解明に挑む。
著者のビル・ブライソンは門外漢ならではの大胆さで科学の奥座敷にドカドカと踏みいり、見て感じたとおりに「科学」という営みを描く。
描きだされるのは、科学者という滑稽な人々が織りなす低俗な争いと、荘厳な知識のタペストリ。
圧倒的におもしろい。
もともと彼は鋭い観察眼とユーモアセンスたっぷりの作風で知られるベストセラー作家で知られているので、本書でも苦笑が絶えない(こういう科学書も珍しい)。
彼特有のユーモア・センス、観察眼も楽しめます。
そんな楽しい「科学の本」です。
網羅している内容(物理、化学、生物学、地学、宇宙学...)が多岐に渡りるので、これだけの分野の本の数冊分の内容(と価格)を擁する分厚い本になっているが、非常に読みやすい。
科学を退屈から救い出した大傑作で、科学は退屈だと信じている人に贈る楽しむ(今のところ史上最高の)科学史だ。
特に文系の人にお奨めだけど、もちろん、理系の人も退屈しないこと、請け合います。
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▼間違いなく科学者に成りたくなる本
ここに紹介する本は、それぞれ僕が寝るのを忘れてまで読みふけった本だ。
いずれも、主人公や著者は相当な熱量の持ち主たちだと思う。
★ホーキング、宇宙のすべてを語る
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★天才数学者たちが挑んだ最大の難問―フェルマーの最終定理が解けるまで
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★ルート2の不思議
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★天才の栄光と挫折―数学者列伝
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★博士の愛した数式
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★放浪の天才数学者エルデシュ
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★二重らせん
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●一般読み物(その2)はこちら |